三越前駅からお江戸日本橋亭の前を通ってKIWIに行く途中、
と言っても、もう1年くらいは経つでしょうか。
和紙を扱っているお店で、
地下にあるギャラリーでは、
黒田征太郎展などを開催している。
でも、何となく入ることなく、
近いからまた今度、と店の前を素通りしていたのでした。
ところが、ようやく朝晩涼しくなってきたこの晩夏に、
書家の「井上有一展」を開催しているというじゃありませんか(バンカなのにショカ…)。
井上有一と言えば、その代表的な著書、
『日々の絶筆』のカバーにもなった字「貧」!で有名です。
書店でこの本を見たとき、字のセレクトといい、
形といい、ほのかなユーモアを感じて即購入。
本のタイトル通り、書を突き詰め、
書家として世界的に認められた晩年になっても、
小学校の教員を続けていた、その生き方も気になったのでした。
というのも、日本では、作品を売って食べていける人だけが
“プロフェッショナル”のアーティストで、
職業を持ちながら創作活動を続けることを、あまり良しとしないか、
“アマチュア”として認めない傾向があります。
でも、そうではないんじゃないかなと思っているので、
井上有一の存在が印象に残っていたのでした。
井上有一展は、8月30日まで。
これもいい機会だと「KAMIYA ART」の敷居を跨いでみると、
お店の方が地下のギャラリーまで案内してくれました。
作品を観ているあいだ、質問に答えるためか、
作品を守るためか(その両方でしょう)、お店の方が付き添ってくださる。
二人きりの、やや緊迫した空気のなかで観る壮絶な「月」の文字。
薄暗い空間には、井上有一のドキュメンタリー映像が流れ、
気合い十分の顔から発せられる、ストイックな言葉の数々が響き渡ります。
資料も閲覧出来るようになっているのですが、
お店の方が、1階のショップを空けたままになっているのが気になり、
早々においとますることに。
短い時間でしたが、ご近所で本物の「月」が観られたので満足。
1階のショップには、和紙や和紙関連の商品や本も並んでいるので、
KIWIのすぐ近くにある和紙の老舗、
小津和紙にご興味のある方は、
こちらにも立ち寄られてはいかがでしょうか。収穫がありそうです。
いまふと思い出しましたが、
お店の入口に掛けてあった巨大な筆(誰が買うのか?と不思議でしたが)
あれは井上有一の筆だったのかも。
井上有一展 「月」
2012年8月1日(水)〜8月30日(木)
中央区日本橋室町3−2−8 地下1階
電話 03−3231−2886
(H)
Happiness is always delicious!
ギャラリーキッチンKIWI