2013年12月26日木曜日

【ルポ】科学バー ネイチャー編 vol.3「北アメリカ湖水地方の旅 ノースウッズで野生を味わう」

ワイルドライスはよく噛んで食べよう
当夜は、ワイルドライスやブルーベリーパイなど、北アメリカの雪国「ノースウッズ」にゆかりのあるフードを、料理家スヌ子がご用意。沢山のお申し込みのために増席したので、皆さんにはご不便をおかけして申し訳ありませんでしたが、臨機応変、ビュッフェスタイルで楽しんでいただきました。

今回の科学バーのゲストは、自然写真家の大竹英洋さん。5月に続いてKIWIでは2回目のトーク。北アメリカの北のほうに広がる湖水地方ノースウッズの撮影を続けて14年。NHKの「ワイルドライフ」で彼の地が取り上げられたときは案内役として出演した、その道の第一人者です。
夏よりも冬が好き。朝はゆっくりタイプ
前回はノースウッズってどんなところ? という入門編でしたが、今回は一歩進めて、ノースウッズの豊かな秋、凍てつく冬、そして暖かくなる春までを木製のカヌーで旅するお話。
かつて毛皮交易で栄えたハドソン湾の南側が舞台
何冊も出ている大竹さんの写真絵本の中の一冊『春をさがして』(たくさんのふしぎ、福音館書店)にまとめた物語をエピソード満載で語ってくれました。
『ノースウッズの森で』は傑作集に選ばれた名作
都会のど真ん中、コンクリートジャングルの中で鑑賞する深い森。写真が素敵なのはもちろん、大竹さんの静かでなめらかな語り口が心地よく、本当に森の中にいるような気分になるから不思議。
深い緑の森と江戸通りの照明のコントラスト!
KIWIでのトークなので食べものの話もしてもらうことに。湿地に自生するマコモの種子で、ネイティブアメリカンも食べていた穀物「ワイルドライス」は前回詳しく話したので簡単に触れたあと、スコットランド起源のスコーンのようなパン「バナック」について詳しく。
オーブンで焼くパン「バナック」
「全粒粉と小麦粉を同量加えてオリーブオイルと塩を少々、さらにベーキングパウダーを加えてスコーンの要領で円形に焼く」って、うまそうやないか(すぐ出来そうだし)
レーズンと塩なしピーナツをただ混ぜたものは旅の行動食として常備するそうで、あとは凍らせたシカ肉は持っていくけれど、湖にいるカワマスやウォールアイ(という名の淡水魚)はカヌーの上からルアーを流したり、湖面にはった分厚い氷に穴をあけて釣って食べるのだとか。

ノースウッズの大自然が気になる方は、ぜひ大竹さんの写真絵本を手に取ってください。KIWIにも在庫がありますし、Amazonでも購入できます。

ご好評につき、大竹さんのトークは2014年3月にも開催予定。日程が決まりましたらご案内いたします。どうぞお楽しみに!


(H)

Happiness is always delicious!
ギャラリーキッチンKIWI

2013年12月20日金曜日

ポマローラ:トマトの水煮をおいしく食べる簡単な方法

本を片手に
トマトの水煮をぐつぐつ煮る。夜中、急に料理をしたくなったとき。休日の昼下がり。お酒を飲みながら、本を読みながらだってできちゃいます。
1時間煮ても見た目そんなに変わらないが・・・
1時間煮ても、炒め玉ねぎのような劇的なビジュアルの変化はなし。少し水分が減ったかな、色が濃くなったかなという程度。でも、香りが違うのです。ハチミツを入れたような濃厚な甘い香りがしてくる。これでベースは完成。お好みでハーブ、野菜、スパイス、塩、胡椒を加えて適当に煮て、あとはパスタにかけるだけ。
シンプル!
まんまですが、これがおいしい。イタリアのマンマが作ったらこんな感じなのかと思ったら、トスカーナの田舎街モンテフィラッレの食堂で同じようなものが供されている。この地域ではトマトソースのことを「ポマローラ」と呼ぶそうです。イタリアンでは「ポモドーロ」という名をメニューで見かけます。
古澤千恵著『とっておきのフィレンツェ/トスカーナ』
ポマローラ、日本の食に例えるなら、おかかと醤油をかけて食べる「ぶっかけうどん」みたいなものでしょうか(釜玉はカルボナーラ!)。いずれにしても、トマトの水煮は1時間くらい煮ると劇的においしくなる。これは本当です。小分けにして冷凍しておけば、いつでもおいしいトマトソースがすぐに食べられますね。


(H)

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ギャラリーキッチンKIWI

2013年12月16日月曜日

【ご近所さん】たいめいけん

レモンとマヨネーズ添え
隙あらば牡蠣を食べている今日この頃。ご存知、洋食の老舗「たいめいけん」の牡蠣フライはどんなもんかなと、並ばなくてもいい時間帯にたまたま店の前を通ったので食べてみることに。レモンを搾って塩で一つ食べ、あとは海原雄山のごとく「醤油を」。せっかく添えてあるので醤油とマヨネーズ(漁師風?)を試したりしながらおいしくいただきました。
どちらも50円
順序が逆になりますが、牡蠣フライの前にはお約束のボルシチとコールスローをオーダー。付け合わせにもコールスローがあったので「野菜を多めに摂るのはいいこと」と言い聞かせながら完食。サービス価格のボルシチは自動的に頼んでしまう一品です。
伊丹十三考案「タンポポオムライス」
多くの方が注文しているのがこちら、伊丹十三考案のタンポポオムライス。フォークとナイフでパセリを皿の端にやって、返す刀(ナイフ)ですーっとオムレツを切り開いてから食べるよう給仕の方から指導を受けるのですが、ほかの食べ方のほうがおいしいんじゃないかと(最後のほうになると味が同じで飽きちゃいませんか?)
選挙の話ほか極上の世間噺が一冊に!
伊丹十三の映画「タンポポ」の取材で、プレーンオムレツの作り方を指導したのが、たいめいけんのご主人。初代か2代目かわからないのですが、いまの3代目ではないでしょう。昨今はやりの100文字レシピなんてちゃんちゃら可笑しい、というかわからないでしょ本当のところは! と思ってしまうのは、この本の中にあるオムレツの作り方を何度も読んで、いつも感動しているから。とにかく文章が長い! 写真がない! こちらも最高に親切だとは思いませんが、先達の心構えと技術の両方を余すところなく伝えたいという作者の心意気に打たれるのです。

(H)

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ギャラリーキッチンKIWI

けあらし

よーく海面を見てください
海から湯気が出ているように見えませんか。日曜日の早朝、外気温は天気予報によれば3度ほど。千葉一ノ宮海岸の水温は体感で13〜15度くらい(落語「芝浜」の熊さんが夜明け前に海水で顔を洗う場面がありますが、きっとこれくらいの水温だったのでは。キンキンに冷えているのではなく、外の冷たい空気に比べると冷たくねえなって思ったのかしらん)
寄ってみました
湯気のように見えるのは、夜のあいだに放射冷却の効果で冷えた空気が、温かい水面(冷たいんですけど!)の上に流れ込み、海面から蒸発した水蒸気が冷やされて霧になる現象「蒸気霧」です。冬の風物詩ですが、寒い北海道、東北、北陸、山陰地方で見られるものと思っていたので、ちょっとビックリ。この蒸気霧のことを毛嵐(けあらし)と呼ぶそうです。
ヤマアラシ from wikipedia
こちらはヤマアラシ。毛嵐という言葉から、どうしてもこの姿を想像してしまい、あの美しい景色と一致しないよなあ、と納得できずにいるのです。


(H)

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2013年12月12日木曜日

放浪者という名のワイン

ビオっぽいラベル
VAGABONDO、放浪者という名のワイン。名前は英語ですがイタリアのワイン。アブルッツォ州という、イタリアの形をブーツに見立てると、ふくらはぎの下あたりにあるアドリア海に面した地域で作られ、はるばる日本にやってきた。味は、料理の邪魔をせず、ほどよく香りはあって色もきれい。短めの余韻は、あっさり他の土地へ旅立ってしまう放浪者ならではのさばさばした性格を表しているのかも。ラベルから、もっとハチャメチャでパンチがあるのに洗練されている、いわゆる面白い味を期待していたので、やや拍子抜け(おいしいんですけどね)。翌日、知人に「昨夜、放浪者っていうワインを飲んだよ」と何かのついでに伝えましたら、彼は「HACIENDA(大農園)というワインを飲みながら地平に思いを馳せていた」んですって。類は友を呼ぶ、と思った直後、いや違う、放浪者と大農園では意味が全然違うことに気づき暫し呆然。このままでいいのだろうか。

(H)

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牡蠣とキャベツと生ベーコンのパスタ

ちゃんぽんみたい
食事当番の日は、夕方10分ほど「今夜は何が食べたいのか?」「子どもたちがよろこんで食べそうか?」と自問自答するのですが、これは! と思いついたものを作るイメージがバシッと決まったときはうれしい。最近、旬の牡蠣を食べているけれど、外食はカキフライか生になりがちなので、そこを解決しながら野菜もとれて・・・そうだ牡蠣とキャベツのパスタにしよう! とひらめいたときの喜びといったら(大げさ)
買い物中に「ベーコンを入れたらおいしくなる」と気付いた自分を褒めてあげたい
生ベーコンを炒め、刻んだキャベツを投入。しなしなになるまで炒めて、コンソメスープをひたひたに。そこに、食べきれない! と思うほどたっぷりの牡蠣を入れてぐつぐつ。飲みかけの白ワインを入れて煮きり、塩で味を整えたところで、うーん何か足りないような。「そうだ クミン 入れよう」で味が決定。「どこかに移住するとしても、冬においしい牡蠣が食べられる土地がいいね」なんて話しながらの晩ご飯でありました。翌朝、少し残ったぶんをおかずとして食べてみると、クミンの香りが強くなりエスニックな感じで、これもまたよし。


(H)

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ギャラリーキッチンKIWI

2013年12月11日水曜日

三軒茶屋の老舗スナックオスカー

三軒茶屋駅の地上に出てすぐの昭和系三角地帯にある老舗スナック「オスカー」。先日KIWIにお越しいただいた都築響一さんの本『東京スナック飲みある記』で面白そうだと思っていたところに、キウイ寄席のお客様Mさんから「オスカー、いいですよ」と、とどめの一撃。すぐにでも行こうと思っていたお店なのです。平日の深夜1時過ぎ、隣の駅に降りたというのに、今夜しかない! との強い想いにふいに駆られ、ふらふら歩いて行くことに。すると、いい案配に知人のイラストレーターI.Hさんに遭遇。「行きましょう、いっしょに飲みましょう」ということに。
進駐軍のバーでカクテルを作っていたという熟練バーテンダーでもあるオーナーはすでに帰宅したあと。息子さんが「ヘタなんですけどねぇ」なんて謙遜ながら作ってくれたマティーニを飲みながら、我々二人の相手をしてくれたのでした。「いま立て替え中の数寄屋橋交差点の東芝ビルに進駐軍のバーがあったんですよ。そこでマスターはバーテンダーを始めて・・・」とか、老舗ならではのエピソードをいろいろ聞いていた中でいいなと思ったのが内装の話。「ちょっとこの壁、中之島のリーチバーみたいじゃないですか」「この前、ミシマ社の社長に連れて行ってもらいましたよ。あそこもここもいいですねー」なんてHさんと話していたら、「これ宮大工が作ったんです」って。レトロな照明がつくりだす陰影の中の壁と天井の細工が潔いのはそれか! と、たぶん何度も何度も繰り返し感心していたと思います。立派なカウンターの縁についた白い肘掛けは見た目もよく、固さがちょうどいいのでリラックスした姿勢で飲み続けられる。「ダルマでハイボールください」と頼めば、息子さんから「ご出身は?」と聞かれ、「東のほうです」と応じると、「ですよね。関西の方はオールドをタヌキって呼びますから」というお酒の話。楽しいですね、こういう会話。何杯かダルマのハイボールを飲んで初オスカーの夜はお開きに。
サントリーバーなのに、ビールはサッポロ ☆! こんな懐の深さがこのお店の魅力です。

(H)

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ギャラリーキッチンKIWI

2013年12月4日水曜日

秋の京都24時間

京都に着いたのは土曜日の夕方。先斗町のバー「meme」で開催される科学バーは夜の7時からなので、少しのあいだ京都の街とお店めぐり。歩き始めてすぐ目に飛び込んできたのが金網と木の奇妙なオブジェ。新洞小学校のグラウンドのフェンスが傾きかけた日差しに映える。紅葉シーズンど真ん中ゆえ、人、人、人なんだろうなと思いきや、裏道というほどでもない大通りから一本中に入った道はすれ違う人も少ない。静かな気持ちで目的地の熊野神社まで歩く。東大路通りの徳成橋からの眺め。疎水の水面に映る紅葉が素敵。
行きの新幹線の中で、まずあそこに行こう! とひらめいたのはカレー専門店「ビィヤント」。熊野神社の斜め向かい辺り、聖護院八つ橋本舗の近くです。15年ほど前にすでに老舗の風格があり、カウンターの中では、たぶん学生運動に熱心だったのでは? と思われる細身でしゃきっとした感じの女性が切り盛りしていたのでした。
ビィヤントのカレーは、さらさらタイプ。ツヤツヤしているのは、蜂蜜かなにか入っているのでしょうか。懐かしいカツカレーを食べたいところをぐっと我慢してチキンカレー。やっぱりおいしい。しかも、カウンターの中には、少し歳をとられたかなとお見受けする店主の女性が軽快なフットワークで狭いスペースを動き回っている。
息子さんかもしれない若い男性と最小限の言葉を交わしながら作業を進めていく店主。お勘定をしたときの表情もいい。店を出ると、ちょうど若い男性の奥さんと子どもが立ち寄ったところで、その子どもを抱き上げた男性がまた「ありがとうございました」と言ってくれる。当たり前のことなのに、また来ようと思わせてくれる。
科学バーが始まるまで、立ち寄りたい場所あるので、河原町界隈へは徒歩で戻ることに。かつて伝説のサルサバー「ピエドラ」があった路地も探索。
ピエドラの入っていた古いビルの1階にあったジャズ喫茶「YAMATOYA」は営業中。建物は新しくなっていて怪しさゼロ。路面も舗装されてしまっていて味気ないですね。路地に入る手前の近くには、アンティーク家具で知られる「ブルーパロット」も営業中。何てことのない中華も残っているのにピエドラだけがない。
岡崎のほうへすたすた歩き、ふたたび疎水と夕日を眺めながら細見美術館へ。
若冲や琳派のコレクションで知られる同館は今年15周年だそうです。
おそらく90年代から続く若冲ブームと小さいながらもおしゃれな建物、空間ゆえに存在感のある美術館になったのではないか。設計は大江匡さん。中庭というか、内側の空間が吹き抜けになっていて、オープンテラスもあるイタリアンがある。開館当時は、心底おしゃれ! と思ったものです(今でも十分いい感じ)
開催中の展示は「琳派の伝統とモダン —神坂雪佳と江戸琳派—」。
神坂雪佳のことも、江戸琳派のことも知らなかったので、へえ〜、と思いながら鑑賞。神坂雪佳は、植物や花鳥風月の図案作成に秀でた人だったようで、船上で見つけた「波」と「水」のモチーフをその場でささっと描いたという図案集が素敵でした。ミュージアムショップで一押しだったのが、神坂雪佳の「金魚玉図」(画像は細見美術館ホームページより)
先斗町の科学バーまで、まだ少し時間があるので、最近雑誌で知った「京極スタンド」へ。予想はしていましたが、河原町界隈は人、人、人。
台湾の食堂みたいだな、と思ってぜひ見てみたかった注文伝票。
出てくるものは可もなく不可もなし。左隣の男性は定食を食べ、右隣の若い男性は文庫を読みながら晩酌セット。カウンター向かいのカップルは、男性が盛り上がるも女性が「なぜ私がここに?」という姿勢を崩さず表情固め。活気があるので、きっといい店なのだと思います。次があったので早々に店をあとにして、いよいよ先斗町へ。
ふつうに歩いている人はまず見落とす控えめな看板が目印の「meme」。
路地奥にある小料理屋へ向かう男性のあとに続き奥へ。
店内はトルコ一色。先斗町ですが、オーナーのシェリーがベリーダンサーで、トルコが好きで、みたいな? よくわからないのですが、こじんまりとして落ち着ける店内。
本日のゲストは、科学バー・海編でおなじみの後藤忠徳さん。「京都の海、トルコの海」と題して、本当に京都にかつてあった海、「古京都湾」の話を披露。海水準が何メートルになると、どこまで京都は浸水するかマップに一同ビックリ。
KIWIの科学バー同様、脱線あり、質問ありで、後藤さんが用意していたスライドは半分ほどで終了。トルコの海まではたどり着けず・・・。でも、「地震のことを専門家に聞きたかったんです!」という地元の方、「こんど神戸で科学バーをひらきたいんです」という若手エンジニアのFさん、気鋭のサイエンスイラストレーター、ウチダヒロコさん(有川 浩 著『県庁おもてなし課』など)、世界一周旅行から帰国したばかりの方もいらっしゃって満席。たのしいひと時となりました。次回は、1月21日に開催だそうですよ。
今回は特に何をしたわけでもないのですが、後藤さんと打ち上げ。memeから北上して木屋町通りをちょっと入ったところにある立ち飲み「わたなべ横丁」へ。
京都ではまだ少ない立ち飲み。魚介が安くてうまい。「ペンネ」なんていうメニューもあって、味付けは辛いトマトソースなので、ペンネ・アラビアータなんですが、それを「ペンネ」と客は呼ぶ。「エレベーター」は、厚揚げの上に大根おろしを載せたもの。店主のキャラクター、きびきび動く店員、味と値段、実はスポーツバーという多面性。住んでいたら間違いなく通ってしまいそう。後藤さんには「おやすみなさい」をして、もう酔っぱらっていたんでしょうね、無性にラーメンが食べたくなってしまい、開いていた一軒へ。京都でラーメンと言えば背脂醤油系なので、それに出会えた午前2時前の幸運に感謝。
ホテルへ向かう途中に六本木にあるテキーラの店「AGAVE」を発見したものの、なんと今夜のお宿は門限が午前2時。門限って・・・。10軒以上電話してやっと取れたホテルなのでもういいや、と諦めたツケがこんなときに。なので入れず。ホテルへ。
翌朝、なんてことのない町家が続く裏道からお散歩をスタート。テキーラを飲まなかったので、1時間は早く出発できたと自分に言い聞かせながら。静かな日曜日の朝。
日蓮宗の本尊「頂妙寺」の境内に入って空を見上げると、紅葉とひこうき雲。この時間は、何本ものひこうき雲が交差してたのでした。
さらに歩いて、こちらは庭園家の重盛三玲旧宅。ここは予約すれば中に入れます。
吉田神社の参道。朱色の鳥居の前にはいつも自転車が。どこに用事のある人がここにとめているんだろうと見る度に思う。
二日目最初の目的地、北白川の進々堂。
店内はほぼ満席。まだ小学生にもなっていないであろう女の子がメニューを持って来てくれました。小さなピンクのエプロンが可愛らしい。
パンで食べるカレーと迷いましたが、昨日もカレーを食べたので、今朝はサラダセットを注文。コーヒーには最初からミルクが入っているイノダコーヒー方式(進々堂のほうが古いからこの表現は間違いか)。ここは味もいいのですが、店内に入る光と、黒田辰秋作のテーブルとイスを味わいに来る場所。
本来なら、1時間でも、2時間でもゆっくりしたいところ。ここは本当は冬がいいんです。本を持ち込み、中庭にしんしんと降る雪を時おり眺めながらコーヒーを飲む。暖をとるのはストーブで、店内は薄暗いけれど寂しくはない。また来ようと思いながら、お客さんも並び始めたので店をあとに疎水沿いを散歩。秋晴れ。
疎水のすぐ近くにある、清水豆腐店はすでに開店していて、おばあちゃんが忙しそうに働いている。
恥ずかしながら、このお店で豆腐を買ったときに、ふと外に並べてある油揚げを見て「油揚げって、豆腐を揚げたものだったのか!」と気がついたのでした。ここのおばあちゃんが作ったおいしい豆腐は、ご近所に愛されるとともに、地元の多くの料亭にも入っているのだとか。清水豆腐から疎水に出て曲がってすぐのところにあるのが、東京日本橋にも同じ名前の店がある「中華そば ますたに」。昨夜も食べたような気がする背脂醤油系ラーメンの元祖。朝10時なので、まだ行列はなし。並ばなくてもいい、というだけでお店に吸い込まれるように入店。
日本橋にある「京都銀閣寺ますたに」は、ここの味を再現したお店。日本橋のお店に行くようになり、本家の味はどうだったかしらん、と気になっていたこともあり。ラーメン、麺固め、ネギ多めで。
味の完成度は、北白川の本家も日本橋もあまり変わらない感じ。むしろ日本橋のほうが洗練されているかも。本家は店内、店員すべての肩の力が抜けていて、ラ〜メンってこんな感じだよね〜と思い出させてくれる脱力系。周りの猛者は、日曜日の朝だというのに、大盛りを頼むは、無料だからといってごはんを付けるは、やりたい放題(笑)
さすがにお腹がいっぱいになったので、銀閣寺裏の大文字山に登ることに。ご存知、哲学の道。10時を過ぎて、私と同じ観光客の皆さんが押し寄せて哲学するにはほど遠い雰囲気です。
目指すは、大文字山の「大」の字の火床。北白川交差点からの眺め。標高約472メートル。
「大」の字の標高は300メートルほど。その道のりは、大人がふつうに歩いて小一時間。さあ、出発。歩き始めてすぐのところには「草喰なかひがし」。まだ開いていません。
銀閣寺への参道から左へ一本入った道を歩き、突き当たりを左折すると「行者の森」の石碑。ここからが大文字山登山(大げさ!)の始まりです。
日曜日ですから、家族連れもちらほら。このとおり美しい景色にも出会えます。
石畳の道もあり・・・
たまに急な斜面もあるので、革靴やヒールのある靴での登山はやめたほうが無難。ふつうのスポーツシューズでOK。
小一時間登れば、京都市内を一望できる山頂付近に到着。直前の階段がけっこうハードなので、みなさん休憩。ここでお弁当を食べたりもして。
見える景色がこちら。
手前の紅葉は大文字山の木々。中央やや下の緑の塊は吉田山。その左少し上が京都御所。左のほうには、見通しのいい日は大阪梅田の高層ビルが見える京都屈指のビュースポット。隣にいたおじさんの話では、淡路島まで見える日もあるとか。下山して、銀閣寺へ。
人が多くて大変と思いつつ、自分もその大勢を構成する一員なので文句も言えず。ショートカットして国宝銀閣、銀沙灘を足早に眺めて退場。世界遺産について思いを馳せながら。
そろそろ帰りの新幹線を気にしながら、どこに行けるかなと考えてみる。少し南下したところにある法然院の墓地が思い浮かんだので、てくてく歩く。
この辺りは銀閣寺と比べれば静かなものですが、まだ人がたくさん。でも、同じ法然院でも墓地には誰一人いない。『「いき」の構造』の著者、九鬼周造の墓参り(親戚とかではなくて単なるファンとして)
墓石の右側には、西田幾多郎訳のゲーテの詩。ほぼ判読不能。メモをとろうとしても難しそうなので、そうだiPhoneに聞いてみよう!と検索してみると・・・
   ゲーテの歌 寸心
   見はるかす山々の頂
   梢には風も動かす鳥も鳴かす
   まてしはしやかて汝も休らはん
と書いてあるそうサイト「墓碑めぐり」より。「九鬼周造」の文字は、西田博士による揮毫と聞いていましたが、ゲーテの歌は今回の収穫。苔むした墓地をあとにさらに南下。ちょっとだけ永観堂。美しいのですが、人が・・・(その一員の自覚はありながら)
永観堂から南禅寺も行っちゃう? と迷いましたが時間がなくなってきたので、西に進路をとり、てくてく歩いて川端通り二条へ。めざすは「加藤順漬物店」。
ずっと前から気に入っている漬物屋さん。外観が変わらないねえ、とお店の人に伝えたら「わからないように新しくしているんです」って。しば漬け、京野菜の日野菜、ちりめん山椒をお土産に。地方発送はしているものの出店はなく、ここでしか買えない味。いよいよ、京都を出発するまで2時間を切り、行けるのはあと一軒。ホテルに寄って荷物をピックアップしないといけなので、残されているのは正味1時間。混雑しているとはいえ徒歩より早いだろうと判断して、川端通りをタクシーで四条まで南下。交差点で車を降りて、早足に祇園「竹きし」へ。
随分久しぶりに訪れる割烹。店内は改装してあったけれど場所は同じ。ここで、料理に合わせるお酒の選び方にはっとさせられたり、食べる人を見ながら出してくれる料理のおいしさに出会ったのでした。この地で営業してもう20年近く経つそうで、今では釜飯のおいしい店として知られるように。うれしいことに、新幹線でほかほかの釜飯を食べたい! というリクエストにも応えてくれるのだとか。
ビールを飲みながら、茶碗蒸し、天ぷら、牡蠣の釜飯、デザートの柿を食べて。最後にお茶を飲んでごちそうさま。ここから歩いて5分ほどのホテルに戻り荷物をピックアップ。三条から地下鉄を乗り継ぎ京都駅へ。京都24時間はこれでお終い。こだまのグリーン車(笑)でゆっくり帰って、東京駅に着いたのは宵の口。丸ノ内線に乗り換えて向かった銀座、資生堂パーラーでは、義母の誕生会ということで、東京らしい洒落た洋食を、家族揃って賑やかにいただいたのでした。満腹。

(H)

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ギャラリーキッチンKIWI